ジュリエット・ビノシュ&アクラム・カーン「in-i(イン・アイ)」

buckpasser2009-03-14


あのジュリエット・ビノシュが踊る?ダンス未経験じゃないの?しかも著名( だそうだ)なダンサー・振付家のアクラム・カーン( あの伝説の「マハーバーラタ」に出演してたのね)と共演での世界ツアーとのこと。生ジュリエットのダンスが観られるのなら、ということで雨の中シアターコクーンに行って来ました。

「in-i(イン・アイ)」とは「inside-i(心の中)」の省略形で「自分自身との出会い」や「新しい自分の発見」だそうなのですが、「様々な愛」を表現する官能的な舞台であることは間違いないです。

椅子が2脚あるだけの舞台で、最初、2人がやたら身体を回転させてばかりなのでどうなることか?と不安になったけど、男女の出会いについての物語が始まって、トイレ使用についての男女の違いの少し下世話なパントマイムや、濃密な絡みあいのダンスや、男女の感情のすれ違い等のモノローグがあり、シンプルな照明・音楽・演出で、よりいっそう2人の動きが観客に伝わる舞台だと思います( 彼女が壁に貼り付け状態になった時だけ凝った演出と言えるかも)

双眼鏡で彼女の表情を見つめながら、喋る時はもちろん言葉の無い時もその表現力は「やはり女優だよなあ」なんて思いました( もちろんクラス的には「大女優」なのですが)。ダンスは専門家の動きとは言えないかも知れないものの、とにかくダイナミックな動きでかつ優雅な感じなのです。予備知識が無ければ45歳とは感じなかったでしょう。

音楽が何度も主旋律を繰り返す中で、少し眠たくなりかけたところでいきなり終了。正味70分でしょうか。勝手な思い込みでもう少し続くと予想していたので、あっけにとられた感あり。考えてみれば、2人だけでずっとパフォーマンスしているので、長時間出来るわけが無いですよね。

ところでジュリエット・ビノシュって、こんなに逞しくて大きい人でしたっけ?太っているという意味では全然なくて骨格からして大きい感じで、アクラム・カーンのいわゆるダンサーの引締まった肉体がとても小さく見えます。身体を絡ませている時なんて、カーンが犯されている?ぐらいの感じです。まあ、ゆったりとしたドレスと長い髪のせいもあるかも知れませんね。

イラストレーターの石川三千花さんがジュリエット・ビノシュのことを昔から酷評していて、ようは「セクシー」でなく「ハイヒールが似合わない足の太さ」で、「ワーストドレッサー」ともいうべきセンスの持ち主、ということらしいのですが、確かにごもっともではありますし、お世辞にも顔が小さいとは言えないです( と今回思いました)。でも、そんなことを含めて女優としての彼女の魅力だと僕は思っています。

マドンナみたいに50歳には見えないサイボーグの様な身体も魅力的ですけど、日本人から見ると少し老いが感じられる40代のフランス女性で、もう少ししたら「マダム」が似合う、という大女優の路線も観客としては魅力的です。

昨日はジュリエット・ビノシュの復習ということで、「ポンヌフの恋人」を借りて観たんだけど、そこから20年近く歳月が流れて彼女が目の前にいるというのは不思議な感覚。その後お口直しということで、坂を上ってユーロスペースで「汚れた血」を観ることも考えたけど、舞台から感じた印象がぼやけるのもやはり嫌なので、おフランス気分もあって「VIRON」でバゲット買って帰りました。


( 追記 )
結局、気になって最終日の公演も当日券で行って来ました。もう流れを追う必要なく、じっくりビノシュの演技とカーンのシャープな動きに集中して大満足。ポンヌフの上でも同じように回っていたなあ、なんて思いました。しかし、客層が昨日とかなり違う雰囲気でダンス(バレエ?)の関係者が多い感じ。やっぱり千秋楽は華やかだね。